第2話:指先の汚染

第2話:指先の汚染

設定を終えたあの「看板」が、ブラウザの端で毒々しく光っている。
紫と緑。自分で選んだくせに、見ていると胃の底がじわりと熱くなるような、嫌な色だ。

「よし、これでいい」

独り言を吐いて、スマホを枕元に放り出した。56歳の体には、深夜の作業はこたえる。
まぶたの裏に、あの角ばった「G」の残像が焼き付いたまま、意識が沈んでいった。

……指先が、妙に冷たい。

深夜、尿意で目が覚めた。真っ暗な部屋で、スマホの画面だけが、頼んでもいないのに勝手に点灯している。
通知は「0」。なのに、画面の中央にあるあのファビコンが、心臓の鼓動に合わせて、ドクンドクンと脈打っているように見えた。

寝ぼけた頭で、画面を消そうと指を伸ばす。
ガラスに触れるはずだった。
だが、指先が触れたのは、ぬるりとした「濡れた肉」の感触だった。

「……っ!」

指が、画面の中にズブズブと沈んでいく。液晶は泥のように柔らかく、俺の指を、手首を、奥へと引きずり込もうとする。
必死で腕を振り抜いた。

静寂。スマホはただの機械に戻り、床に転がっている。
だが、俺の右手の人差し指は、爪の先から第一関節まで、あの毒紫と湿緑が混ざったような「汚泥」で真っ黒に染まっていた。

洗面所で石鹸をつけ、皮が剥けるほどこすった。
落ちない。
それどころか、その色は皮膚の下、血管の道筋をなぞるように、ゆっくりと肘に向かって這い上がり始めている。

今、あんたの画面の端に映っているその色が、俺の腕を這い上がっている色と同じだとしたら、あんたならどうする?

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